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検索で見つけてもらえない時代に

企業広報の重要な役割の一つは、自社の認知を高め、ウェブサイトやオウンドメディアへの流入を促すことです。そのため、SEO(検索エンジン最適化)に取り組んでこられた方も多いでしょう。しかし、最近ではGoogleの検索結果に「生成AIによる概要」が表示され、ユーザーが深掘りしてサイトにアクセスする機会が減っています。いわゆる「ゼロクリック時代」と呼ばれている現象です。こうした環境変化は、広報活動の前提を大きく揺さぶっています。

SEOからGEOへ:検索対策の新潮流

近年、新たに注目されているのが GEO(Generative Engine Optimization) です。
GEOとは、AIエンジンに自社の正確な情報を認識・活用してもらう工夫を指します。

たとえば、FAQやプレスリリースを構造化する、信頼できる外部メディアに情報を掲載するなど、AIが正しく情報を学習できる環境を整えることです。ただし、GEO対策には一定のコストと手間がかかります。全ての企業にとって費用対効果が高いとは限らず、まだ模索が続く領域でもあります。

広報が目指すのは「数」なのか?

では、こうした状況下で広報はどう動くべきでしょうか。

まず重要なのは、広告などで「広く届ける」ことに固執せず、確実に届けたい相手に情報を届ける視点です。
SNSのフォロワー数や動画の再生回数など、数値は分かりやすい指標ですが、それだけでは企業が狙うブランドイメージが相手に届いているかはわかりません。むしろ、数の質、つまり「誰に」「どのように届いたか」を重視した方が本質的ではないでしょうか。

ハンズオンの接点×デジタルで持続的な関係を築く

そのために、リアルな場でのハンズオンの接点(セミナー、展示会、説明会、共創プロジェクトなど)を起点にしてみてはいかがでしょうか。
これらの「顔の見える接点」「確実に届く場」で関係をつくり、その後SNSやオウンドメディアでの情報発信によって関係を深め、切れないように維持します。

このとき、発信する情報もコピペ可能な、どこにでも流通しているような事実情報ではなく、自社の特徴や強みを反映した企業の「らしさ」を軸として、「役に立つ」「意外性がある」「信頼できる」など、相手が興味を持ち続けられる内容がカギとなるでしょう。

「点」×「線」、そして「面」で考える広報戦略

生成AIによってゼロクリック時代とまで呼ばれる今日において、広報戦略は「点」で確実に接点を作り、「線」で関係を広げていくアプローチを取ることが重要と考えます。広告やSNSも無駄ではありませんが、それだけに頼らず、関係性の深さを意識した活動が、ブランド価値向上につながります。

生成AIは、日常的に多くのビジネスパーソンの良きアシスタントや相談相手となりつつあります。しかしそれは、自己との対話でもあります。「本当にこれで大丈夫だろうか」「他社はどうしているのだろうか」という不安や疑問は、AIでは埋めきれない部分です。

そんな時、誰に相談したいか。それは、既に接点があり、信頼できる相手ではないでしょうか。企業広報がめざすべき未来像は、こうした「信頼関係に基づくコミュニティ」を育むことにあります。

私たちが考える新しい時代の広報戦略のマイルストーンは、確実な接点の「点」 × 継続的な情報発信による「線」、そして信頼を基盤とした「コミュニティ=面」 です。

もちろん、コミュニティは一朝一夕にできるものではありません。まずはリアルな接点やオウンドメディア、SNSなどで信頼を積み重ね、その輪を少しずつ広げていくことが大切です。この「点」と「線」の活動を粘り強く続けることが、結果的に企業のブランド価値を高め、持続的な成長につながっていくと考えます。

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