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【SNS選挙】党首討論コンテンツに対する視聴者の政治的関心(第31回日本広報学会研究発表全国大会ポスター発表)

2025/10/14 お知らせ, ブログ SNS運用, SNS選挙, コミュニケーション戦略, ソーシャルメディア, デジタルメディア, 日本広報学会, 生成AI, 組織コミュニケーション staff

2025年10月11日・12日、東京都市大学世田谷キャンパスで開催された第31回 日本広報学会研究発表全国大会にて、弊社代表ブレッドスミスと生成AIリサーチャーの小野寺がポスター発表を行いました。

ポスター発表 演題
『YouTube上の党首討論コンテンツに対するコメント分析による視聴者の政治的関心の可視化』

SNS時代の政治的関心を、YouTubeのコメントから読み解く
第31回日本広報学会研究発表全国大会-ポスター発表

▲ポスター前に立つ小野寺(左)とブレッドスミス(右)

本研究では、2025年7月に行われた参議院選挙を対象とし、主要報道機関がYouTubeで配信した「党首討論」動画に寄せられた33,611件のコメントを対象に、感情傾向(肯定・否定・中立)および発言の対象(政策か人物か)を分析しました。

近年、SNSが政治情報の流通経路となる中で、有権者がどのような形でオンラインコンテンツに反応し、政治的関心を持つのか──そのリアルな声を可視化することが、本研究の目的です。

感情分析に生成AIを活用、効率性と信頼性を両立

大量のコメントを効率的に処理するために、大規模言語モデル(LLM)を活用。複数の生成AI(Gemini 2.5 Flash Lite、GPT-5 mini、Claude Sonnet 4)を比較検証し、人間の判断との一致度とコストパフォーマンスが高かったGeminiを採用しました。
感情ラベリングには人間の主観的バイアスが入りやすい点も考慮し、AIによる分析と人間の判断を照らし合わせながら、信頼性と効率性の両立を目指しました。

コメントの7割がネガティブ──人物への関心が政策を上回る

感情分析の結果、以下の傾向が明らかになりました。

  • コメントの約70%がネガティブな反応
  • 政策よりも人物(党首)への評価が多く、全体の52.4%を占める
  • 「話し方」「わかりやすさ」「態度」など、非言語的な印象への言及が多数

これらの結果から、視聴者は候補者の政策よりも人物そのものの印象に強く反応する傾向があり、選挙戦略や広報活動においては、政策訴求と並行して「人としての印象形成」が重要なポイントであることが示唆されました。

【会場で寄せられたご意見やご感想】
第31回日本広報学会研究発表全国大会-ポスター発表

▲隣は同じ研究会のメンバーによるポスター発表。多くの方が足を止めてくださいました

  • 「人物評価に関するコメントが多いのは、肌で感じるところと一致している」
  • 「私は政策評価が思いのほか多いのが意外だった。どのような政策に関心が寄せられているかも明らかになるとよいと思う」
  • 「生成AIの性能比較もおもしろい」

CMCとしての視点:政治を語るのではなく、政治と有権者のコミュニケーションを捉える

当社は特定の政策や政党を支持しておりません。
しかし、SNSを通じて選挙活動のあり方と有権者の意思決定が変化しつつある現状において、「コミュニケーションの観点からこの変化をどう捉えるか」は、私たちにとって避けて通れない問いでした。
その中で、SNS選挙研究会に参加し、さまざまなバックグラウンドのメンバーとの意見交換を重ねる中で、新たな視点や問いが見えてきました。今回の研究は、その最初の一歩です。
今後は、選挙や政治の変化を追いつつ、SNSが企業や団体の評判、ブランド、リーダーシップに与える影響にも着目し、コミュニケーション戦略に活かせる実践的知見の発信を目指していきます。

まとめ:AIとSNS時代のコミュニケーションを再定義する

今回のポスター発表では、YouTubeという身近なプラットフォームの中に、視聴者のリアルな政治的関心や態度が色濃く現れていることが示されました。さらに、生成AIを活用した分析手法により、大量のデータから意味のある傾向を読み取ることが可能になったことも、本研究の大きな成果です。
政治分野の研究で得られたこの手法や知見は、企業コミュニケーション、ブランド分析、危機対応などさまざまな領域にも応用できる可能性があります。
今後もクロスメディア・コミュニケーションズでは、テクノロジーとコミュニケーションの接点を探りながら、実務に役立つ情報の発信を続けてまいります。

関連リンク:
日本広報学会

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