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【2017年と2025年の比較】米国トランプ大統領の就任演説 ~トップメッセージのヒントを探る~

2025/4/2 お知らせ, ブログ, 未分類 コミュニケーション戦略, スピーチ, トップメッセージ, リーダーシップ, 就任演説, 演説 staff

2025年1月20日、ドナルド・トランプ氏は第47代米国大統領に就任し、演説を行いました。トランプ氏にとって大統領演説を行うのは2回目であり、最初は2017年第45代米国大統領就任の折でした。トランプ氏の発言はしばしば問題視されることもあり、今回語ったメッセージにも注目が集まりました。本稿では、2017年と2025年の2つの就任演説を比較し、そこからトップメッセージのヒントを探っていきます。

本稿はトランプ氏の演説手法を分析することを主旨としており、トランプ氏本人および政治的立場を支持および批判するものではありません。

▲【2017年】トランプ大統領の就任演説の様子(GPA Photo Archive / photo by U.S. Marine Corps Lance Cpl. Cristian L. Ricardo)

 

修辞的比較
エトス(信頼) 過去の政権を支配層・豊かな者として引用し、そうではない国民を「忘れ去られた」存在として対比させ、またトランプ氏自身がその理解者であると位置づけている。 演説の数カ月前にペンシルバニアでトランプ氏が耳に弾丸を受けたエピソードを紹介し、自らを「250年の歴史の中で最も試練を与えられた指導者」と表現。また選挙結果や支持層の拡大を主張し、自らの権威を示している。
パトス(感情) 「American carnage(アメリカの惨状)」という強い言葉を使い、米国の現状に対する不安や危機感を喚起している。また「right here」「right now」と今まさに変化が起きることを予感させ、「Make America…again」というフレーズを繰り返し、より良い状態になる期待感を醸し出している。 ペンシルバニアでのエピソードを紹介し、自らを「神によって救われた存在」とドラマティックに表現している。「かつてないほどに団結している」「かつてないほど繁栄するだろう」など「never before」など誇張表現がたびたび使われ、また国民の誇りを刺激する言葉も多い。
ロゴス(論理) 経済の衰退や過去の政権の失敗などの主張が多く、具体的な政策案などが少ない。 2017年同様に課題を指摘するが、解決策は単純化されている。前回よりも大統領令の発動を示す発言が多い。

 

スピーチ(English)での代名詞の使用回数比較
2017年
演説時間:約16分20秒
2025年
演説時間:約29分50秒
“we”
“our”
49回
48回
合計:97回
88回
71回
合計:159回
“I”
“my”
“me”
3回
1回
0回
合計:4回
36回
16回
2回
合計:54回
“their”
“they”
11回
5回
合計:16回
12回
10回
合計:22回
“you”
“your”
12回
11回
合計:23回
33回
5回
合計:38回

2017年と2025年の共通点

トランプ氏のスピーチは、小学校高学年から中学生くらいの年代にも伝わるような語彙を使い、一文の単語数が少なく、同じ言葉やフレーズを繰り返す傾向にあります。これはRepetition(反復)という文学技法の一種であり、演説などでよく使われる手法の一つです。特に演説やスピーチのように、聴衆の注意が限られやすい場面でよく使われます。また「もっとも」「かつてない」などの誇張表現や不安や危機感を煽る表現も頻繁に使われており、ポピュリズム的なトーンが強い印象です。

2017年と2025年の違い

主語の回数を比較した上記の表では、特に”I”, “My”, “Me”といったトランプ氏自身を指す主語が増加しており、他の主語の増加率との比較や演説時間を考慮しても顕著に多いことがわかります。トランプ氏自身の考えが政権に反映されることを強く印象づけた格好になったといえます。
また2025年の演説では、前回の演説とは異なり人種やジェンダーに対するスタンスをはっきりと示し、「人種と性別を社会的に操作しようとする政府の政策を終わらせます」と民主党が推進してきた政策を見直すことを宣言しました。これは国民の分断を助長する懸念や性的および人種的マイノリティの反発を招くことなどには拘泥しない強硬的な姿勢であると同時、そのような政策を示すトランプ氏の支持層が盤石であることを表しているとも解釈できます。
また、移民、薬物、治安、インフレなど、今日の米国が直面するさまざまな問題に一つ一つ触れ、大統領令を使って具体的に実行することを明示しました。この具体的な実行への約束は2025年の就任演説に見られた特徴です。

このようにトランプ氏の2つの大統領就任演説を比較してみると、今回のトランプ氏は2017年の時よりもリーダーとしての自信を高め、自らの政策の実行力を誇示していると見ることができます。また前政権下で変化した米国のさまざまな社会的な状況を改善する策として、「米国第一主義」の立場をより明確化し、同時に米国の利益や安全を脅かす「敵」の存在を国民に知らしめました。このような演説のスタイルは対立構造を強調しているともいえます。

演説手法の比較から見えてきたこと

トランプ氏は大統領であると同時に、経営者でもあるため、リーダーのコミュニケーションとして何か参考になるポイントがあるのではないかと探ってまいりました。得られたポイントは以下の通りです。

  • 反復や誇張表現は、強い印象を残すものの、オーディエンスを扇動する狙いがあると印象付ける可能性がある
  • 「私」や「私の〇〇」などの多用は、自信や熱意のあるリーダーシップ像を表現したいときには参考になるアプローチである
  • 「私たち」や「私たちの〇〇」などの表現は、オーディエンスとの連帯の雰囲気を醸成するアプローチである


これらの気づきが、トップメッセージやエグゼクティブのスピーチなどを検討する際の参考になれば幸いです。

参考情報

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