お知らせ
なんだかフワフワしてその有効性を実感しにくい「ストーリー」についてご紹介しているこのブログ。前回は、社内取材の徹底や読み手目線の重要性をご理解いただきたいという発信側(わたし)の狙いを、わたし自身が広報の現場担当者だったときの経験をもとにした物語風の記事に内在させたものでした。
今回は、物語形式ではなく事実を中心にした表現で、ひとつの教訓をご紹介します。前回の物語風と読み比べていただいて、どちらの方が「感情移入」しやすいのかを考えてみてください。
歴史年表と時代小説
比べることができるような同質のものではありませんが、それでも、ちょっと無理をして、比較してみてください。
1)いつ、その出来事があったのかを調べるときは?
→ 私は確実に歴史年表を見ます。
2)その出来事が起きた背景を調べるときは?
→ 私は時代小説を読みます。(実際にはネットで検索しますけどね!)
人は、どのような情報に接した時でも、ひとりひとりが過去の経験に基づいてその情報を解釈します。
歴史年表には史実が端的に載っていることを過去の経験から知っていますし、時代小説の方がより多くの情報が得られるであろうことを過去の経験から知っています。
では、たとえばお客さまに自社のことをより良く評価していただきたい、と考えた時は?
歴史年表のような事実に基づくアプローチと時代小説のような物語に基づくアプローチのどちらが有効でしょうか?
ここでも、読んでいただいている皆さまは、過去の経験を基に答えを考えていらっしゃるはずです。
「当然、時代小説のようなアプローチの方がいいでしょ!」と直感的にお感じになった方もいらっしゃるでしょうし、
「いやいや、そもそも、ここで言う評価とは何なのよ? 財務体質に対する評価なら歴史年表みたいな事実に基づくアプローチの方が断然良いんじゃないの?」とお感じになった方もいらっしゃることでしょう。
ここでよくある結論は「何を評価してもらいたいのかを明確にしましょう」——。
ところが、記者・PR会社・広報実務の3つの立場を経験した私なりに、この結論をとらえると、あまりにも一般論すぎて反論のしようがなく、実務上はあまりピンときません。
実は、「何を評価して欲しいのか?」を先に考えてしまうと、思い切り自社目線になってしまいがち。
たとえば財務体質を評価して欲しいと考えた場合、どうしても財務指標を分かりやすくお伝えすることとの結びつきが強くなり、発想に拡がりが生まれません。
前回のブログでご紹介した、わたしが「パブリシティ」にとらわれてネタがないと悩んでいた状態と、ほとんど変わりがないのです。
もちろん、「財務体質の評価を上げる」といった目標を設定する必要がない、という意味ではありません。
知識や情報が少ないままに目的や目標を明確にしようとすると、かえって視野が狭くなる、可能性を狭めてしまうことがあるのです。
多くのネタを机の上にならべたうえで、「財務体質の評価を上げたい」と目標を設定するのであれば、ネタの選定の拠り所や表現方法の選択の判断基準として、とても有効に機能します。
今回は、基本的には「解説」です。
「分かりやすさ」の基準では、前回と今回のどちらが良いかは、好みが分かれると思いますが、「感情移入」に絞るとおそらく前回の物語風(ストーリー)の方が勝るとお感じになるのではないでしょうか。
物語風(ストーリー)は、理路整然とした説明よりも、読み手にとって過去の経験と結びつける「余白」がより多くあります。押し付けられているような、説得されているような感覚がなく、共感しやすいのです。「余白」を埋めようと、読み手が好きなように解釈してくれて、良いように意味づけをしてくれるのです。
一方の、理路整然とした論理的な説明は、解釈のずれを極力なくすことができます。
物語風の表現よりも誤解を少なく情報伝達しやすい方法ですが、一般的に感情移入はされにくいものです(歴史年表に感情移入はしませんよね?)。
ストーリーコンテンツは、読み手の懐に入りやすい、関係を構築しやすいものなのです。
だからこそ、量より質。関係性のマーケティングを実現しようとするものですから、ここでむやみやたらにSEO対策をしようとするのではなく、1本1本のコンテンツに対して、愛情をしっかりと込めた方が、よっぽど良い成果につながります。
自社の魅力を、堂々と表現することは楽しいですよ!
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