お知らせ

少し前のデータになりますが、2017年度に倒産した企業の平均寿命は23.5年(※)だったそうです。
つい最近も、壮年世代が慣れ親しんだアパレルブランドが民事再生法を申請するなど、持続可能な社会を標榜する昨今においても、会社の継続は難しいものだと思います。

私は大学を卒業してから36歳まで、米国の半導体メーカー、テキサス・インスツルメンツ社(TI社)に勤務していました。
最後の部署である企業広報部に在籍していた折、ドイツへ出張中だった米国本社のトップが58歳で急逝しました。
次に社長になったThomas J. Engibous氏は1996年当時42歳、既に私は退職していましたが、2004年に社長になったRichard K. Templeton氏は当時37歳で社長になりました。
その間約8年。
激動の半導体業界にあって、生き残るには若くないとやっていけないとばかりの印象を持ったことを覚えています。
実際にこの数年間、ある半導体部品のトップシェアを持っていたのがTI社で、私が社員として企業コミュニケーションを担当していた時代とは真逆の分野でのトップシェアでした。
今から考えると、若い経営者が常に5年、10年先を見据えて会社の強みを変えていったのだと思います。

私が入社した当時、TI社は全半導体メーカーのトップシェアを持っていました。
何でも作り、ある意味半導体のデパート状態だったと思います。
その後数年でトップ10に入るか入らないかというところまでシェアが落ち込みました。
何でも作って売っているデパートではありましたが、圧倒的な強みがなかったのです。
業界内で数々のメーカーが倒産、買収を繰り返し、会社の名称すら変わっていく中で、30年経っても未だにトップシェアを持っているということは評価に値します。
社会需要をみて、少しずつ専門性を変化させていったことの結果だと思います。
会社としてこだわり、絶対に変えてはならないものは何か、変えていかねばならないことは何なのかを理解していると会社に対する需要は高まり、結果的に寿命が長いといわれることになります。

まさに「不易流行」そのものです。
また、現代は内外のコミュニケーションのスピードが加速化していますが、TI社は私が在籍していた30年前から企業としての価値観を可視化していたことも、企業が社会や社員に受け入れられ続けた一因かもしれません。
人が変わること、業態を変化させること、時代の流れを掴むことなど、会社が長続きするには様々な要因があると思います。

決して経営者だけが信念や矜持を持つものではなく、企業コミュニケーションを担当している私たちコミュニケーターもまた、同じ気持ちを持ち、内外のステークホルダーと向き合うことが必要ではないでしょうか。

※出典元:DIAMOND online(2019.5.20)
URL:https://diamond.jp/articles/-/202870

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