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企業コンテンツが政治的な問題にならないために

2016/9/7 ブログ グローバル・海外広報, リスク・危機管理, 企業レピュテーション, 企業広報 Tammy Kusama

企業やブランドは、ソーシャルメディアで存在感を示そうと、ユニークなコンテンツづくりを日々行っています。

既存のお客様やファンだけでなく、より多くのステークホルダーとの接点を持つために、企業は、ナショナルイベントや各国の文化的な行事に関連させた投稿を行い、創意工夫を凝らしてエンゲージメントの機会を得ようとしています。しかし、アイデアを込めたコンテンツやデザインが、稀に、受け手の気持ちを傷つけてしまう場合があります。

ここでは、過去に起きた事例を3つ、ご紹介しましょう。


 

コカ・コーラ:地図上のクリミア半島

一つ目は、コカ・コーラ ウクライナの事例。2016年1月にコカ・コーラ ウクライナが消費者向けに新年の挨拶をVK(ロシアで最も人気の高いソーシャルメディア)に投稿。

2014年に併合したクリミア半島が描かれていなかったことにロシア人ユーザーから猛反発。そして、図版を修正して再投稿したところ、今度はウクライナ人ユーザーから猛反発。

結局、コカ・コーラはこの投稿自体を削除しました。本件については、コカ・コーラ本社は「制作を委託した外部業者が勝手に改変した」とコメントしました。

(参考情報:http://indy100.independent.co.uk/article/cocacola-made-russia-very-angry-and-started-a-boycott-in-ukraine-with-this-map–bJ1mPv8xnx

 

ノース・フェイス:日本海/東海の表記

二つ目の事例としては、アウトドア・アパレル大手のノース・フェイスが2014年に発売したジャケットです。

このジャケットには世界地図がデザインされており、韓国のユーザーが「日本海」(Sea of Japan)と表記されているもの(国際的にはそう認知されている)を、「東海」(East Sea)と表記するべきであると抗議し、ノースフェイス不買運動を起こしました。

抗議はネットで出回り、多くの韓国人がボイコットし、このジャケットは韓国で売られることはありませんでした。

(参考情報:http://www.koreatimes.co.kr/www/news/nation/2016/08/116_211625.html

 

ディズニー・ジャパン:原爆忌の日

最後の事例はディズニー・ジャパンの事例です。

昨年の2015年8月9日の長崎原爆忌の日にディズニー・ジャパンの公式ツイッターが「なんでもない日おめでとう。」とつぶやき、批判コメントが殺到しました。

ツイートは削除される騒動となりました。実は、その三日前の2015年8月6日の広島原爆忌の日にも、同アカウントは「暑中お見舞い申し上げます。」というツイートをしており、不謹慎であるとの書き込みを多く受け、つぶやきは削除されていました。

(参考情報:http://matome.naver.jp/odai/2143910702689103301

 

受け手に対する認識や理解の不足が、評判を落とすことにつながる

これらを参照し(特にはじめの2例)、どういう判断が正しかったのか、という議論をすることが目的ではありません。

政治的にも非常に難しい問題です。

ここで言えることは、この2例に関しては、企業やブランドが責任を負えないレベルのテーマに触れてしまったということです。(おそらく、意図したわけではないでしょう。)

多くの企業がグローバルにビジネスを展開する昨今、コミュニケーション担当者は、時事問題や世界情勢に敏感でいなければなりません。コンテンツを公開する際には、「受け手」がどのようにその情報を受け止めるのか、感度を研ぎ澄ませ、社会理解、ステークホルダー理解に基づいた十分な検証が必要です。

 

グループ本社と地域担当者との連携でリスク回避を

一方で、グループ本社が、世界中の政治問題を把握することは容易ではありませんし、グループ会社の投稿をすべて検閲することも現実的ではありません。

こういった各地域が抱える諸問題に配慮するためには、このようなコミュニケーション・リスクにつながる要素や留意すべきポイントを、各地域のコミュニケーション担当者と共有することが大切だと、私たちは考えています。

まずグループ内のコミュニケーション・ガバナンスを整備することから検討してみてください。

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