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【第3回】意図されたコミュニケーションが個人とチームの力を引き上げ
2018/4/25 ブログ インターナル・コミュニケーション, キャリアアップ, コミュニケーション教育, チームワーク
実感してほしい。個の力では果たせない大きな仕事を実現する集団の力。
ブレッドスミス:前回の続きをお聞かせください。
野村先生が、ご自身のゼミで人と人とのつながりを重要視することにしたのは、なぜでしょうか?
野村教授:教育現場においてゼミのような集団で創り上げる成果は、個人の評価に帰属する仕組みが浸透しています。
成績表には個人の評価しかなく集団での評価はそもそも設定されていないことからもわかると思います。小学生のときからこのような評価ばかりされていると、『ミーイズム(自己主義)』、つまり、自分のことだけをすればいいという感覚が当たり前になってきます。それでは個人の力しか育まれません。
一方、社会では大きな仕事をこなすために集団での力が必要になります。
この集団での力を学生のうちに肌で感じることができているかどうかはアクティブラーニングをしてもはっきりとは見えてきません。
ですからこのゼミでは、集団での力を一つのキーにしてきました。
また、「人の数」ではなく「人との関係の数」を重要視しました。
ゼミ生34人という人数ではなく561通り(注:n(n-1)/2) )の人と人とのつながりを重要視することで、3倍にも4倍にも力が増幅することを証明しようとしました。その最終的な結果として『ゼミの手帖』は2週間で完成させることが出来たのです。
またゼミでは相対評価ではなく絶対評価をしました。
集団での力によって成し遂げた成果があればそれを評価すればいいからです。単なる個人を相対評価してしまっては誰かが落ちこぼれなければなりません。ゼミ生は一つの目標に向かって同じ方向に支え合う仲間と共に、今回は新書を作ったわけですから相対評価であってはいけないのです。
コミュニケーションの工夫がチームを前に進めるということ
ブレッドスミス:新書を出版する活動を通じて、学生自身のマインドにも変化が多かったのではないでしょうか。
この活動に参画する前後の自分を比べて、何か意識の変化がありましたか?
新沼さん:新書を作るにあたってWork Chat というメッセンジャーアプリで連絡を取っていましたがレスポンスが速い人ほどタスクをこなすのも速かったように思います。
誰もレスポンスをしていない段階で第一声を上げるのは勇気がいりますし、その一歩を簡単に踏み出せる人ばかりではありません。また、先生やリーダーからの指示を理解して応える力にも差があります。新書を作る中では誰がどれだけゼミ活動に関わっているかが可視化されてしまい、一歩を踏み出せずにいる人や指示を理解できずにいる人をどうフォローするか、悩ましく思いました。
試行錯誤を繰り返しながらも個別にアプローチしてみると、彼らもやるべきことがわかればきちんと協力してくれることに気づきました。
私たちの新書制作のように、短期間で成果を上げなければいけない場合は、それぞれが苦手分野を克服するように促すよりも、得意な人がそれを補えばいいのではないかと考えます。
大切なのは補える手段を持つことです。人と人のコミュニケーションを深めることで解決するのか、システムを考え直す必要があるのか。目標達成のために取るべき手段を常に考えることでチームの力を伸ばすことができると思います。
西松さん:家や学校で本を書いている時だけでなく、電車の中でも本の内容を考えていて、突然良いひらめきが思い浮かぶことがありました。その場合、その場でスマホにその内容を書いていました。電車の中でここまで多く考えて問題解決をしたことは今までなかったです。
また、私は編集長という立場にいたため、一人一人とどう接していけば良いか考えることも多かったです。指示がなかなか理解されないことがあり、指示の出し方を反省したこともありました。
長山さん:作業を始めたばかりのころは、チーム内のチャットを使って頻繁に作業する頻度は低い状況でした。しかし作業を重ね、だんだんと締め切りに近づくにあたってチャットの更新頻度は高くなっていきました。細かな変更点まで話し合うようにしていたので、全員に状況が共有されて非常に高いパフォーマンスを発揮できていたと思います。この意識の変化こそがチーム力が向上したと考える理由です。
大坪さん:新書を作るまでの過程で、相手に自分の言葉を伝える大切さを知り、積極的な意見のやりとりは重要だと感じられるようになりました。
今までは、同じ様な意見は誰しも持っているだろうからと、あえて自分が意見を言わないことがありましたが、それは自分の為にも周りの為にもならないことに気づきました。
自分の意見を発信するということは、自分をさらけ出すことになり、恥ずかしく思っていましたが、意識を共有化しないと目的である新書が完成しないわけですから、自分の思いは積極的に伝えるべきだと考えるようになりました。
また、成果物があることで自分はモノを作り出すことができるという自信がつきましたし、新書制作という明確な目標があったからこそ、目的の方向性を間違えることなく、努力が報われるかたちになっていたことが、また前に進もうという意欲を起こさせてくれたのだと思います。
- 学生の皆さんが主体的に動けるよう、 野村教授が複数のクラウドサービスを導入したり、お茶会などの実際に顔を合わせる場などを設けたりしてコミュニケーション環境を充実させたこと
- 学生たちもチームとしての活動の中で困難を解決しようとコミュニケーションに工夫をし続けたこと
この2つのことがチームの力を大きく向上させ、たった半年の短期間で8冊もの新書を作るという大きな仕事を成し遂げることができたのではないでしょうか。
市場がグローバル化し、競争もますます激化する一方で、スピード感あるビジネスを求められている企業においても短期間で成果を出すことが求められています。野村ゼミの活動に見る『チーム力の向上』を目的としたコミュニケーション環境の充実、個々人のチーム内コミュニケーションの工夫はどの企業にも参考になるはずです。ぜひあなたの身近なチームで試してみてください!
野村先生、学生の皆さん、今回はお忙しい中、お話を聞かせてくださり、誠にありがとうございました!!
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