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「2億円事件」に見るダイバーシティ&インクルージョン

2019/1/31 お知らせ, ブログ Kaz Amemiya

ラーメンチェーンの幸楽苑は昨年大晦日に「2億円事件」と銘打って新聞一面広告を打ちました。
それは働く人の気持ちを考え、正月元旦の営業を休むという宣言でした。
その日に見込まれる売り上げの予測が2億円だということで、加えて年末の新聞一面広告出稿費とクリエイティブを考えると相当の出費になるはずです。
もちろんいくつかのネガティブコメントはありましたが、ソーシャルメディアなど見てみると大方ポジティブに捕らえている人が多いようです。
参照:幸楽苑ホームページ「2018.12.31 年末年始のお知らせ」 

実際には元旦はおろか、4日まで休業にしていた飲食チェーンもあったそうですが、見える形にするというのもひとつのコミュニケーションの方法だと思います。
世の中では「働き方改革」や「多様性の受け入れ」が叫ばれてきていますが、会社としてこのように表現することは勇気のいる対応だったと拝察します。
しかし、何かが確実に変わっていったことでしょう。

ソーシャルメディアの出現で、誰もが気軽に発言できるようになりました。
ソーシャルニュースのほとんどにコメント欄が付き、一般に報道されるニュースにも社会の意見が反映され、メディアの報道を一方的に妄信する事も少なくなりました。

企業が商品やサービス以外の事を配信するのは両刃の剣でいろんな意見にさらされることにもなります。
本件も、ただ粛々とやって企業広告など発信しなくても良いという意見も聞こえてきます。
だからといって口を紡いでいてよいのでしょうか?
粛々と正しいことを行っていれば何も言わなくても伝わるはずだ、というのはコンテキスト(文脈・空気を読む)が共有できた20年前までのことかもしれません。
今は様々な世代、様々な意見を言う人が増えています。
企業は炎上のリスクによる信頼の低下を恐れ、無難なことしか発信しない傾向にあります。

ダイバーシティ&インクルージョン(多様性の受容)とは決して人種や性別や価値観の違いを受け入れることだけではなく、当たり前ですが彼女・彼らの考え方の違いに耳を傾けることでもあります。

信念を持ってコミュニケートしていけば、誤解が生じたとしても、それを覆す味方もまた現れます。
アメリカのデロイトというコンサルティング会社は、社内における世代の違いに着目し、社内の違う考え方を受け入れることで多様な顧客の問題解決に対応しようとしています。

ソーシャルメディアは双方向メディアですが、決して企業に高尚な対応を期待する ものではありません。
企業の一方的な告知では、せっかくの傾聴の機会を逸していることにもなります。

「あなたの意見を聴いているよ」と受け入れる(承認欲求を満たす)だけで、企業にとって貴重な意見が集まって来ますし、今後のコミュニケーションのヒントになることもたくさん得られます。
また、揺るぎない企業信用を確立することにつながると考えられます。こうした平時の信頼関係が不祥事などの有事の際に信用を取り戻す余地を残してくれます。
企業広報担当者の皆さんは勇気を持って発信し、違う意見を聞き入れるようにしてはいかがでしょうか。
そういう企業が増えることで、日本の企業コミュニケーション文化も変わってくると思います。

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