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人種差別事件を契機に見直される企業姿勢
2020/6/25 ブログ グローバル・海外広報, コミュニケーション戦略, ダイアローグ, ダイバーシティ, 企業広報
5月25日に米国ミネソタ州で白人警察官が黒人男性のジョージ・フロイドさんを拘束する際に窒息死させるという事件が起きました。これをきっかけに世界中で#BlackLivesMatter(以下、#BLM)のハッシュタグをつけたソーシャルメディアでの抗議投稿や、一部が暴徒化した過激な抗議活動が広がっています。
ディズニー、ナイキ、インスタグラムなどに代表される一部のグローバル企業がこの事件や人種差別・不平等に関する考えを表明し、#BLM運動や黒人の地位向上の支援など具体的な行動を取り始めています。
まず、私たちは今回起きている事件がアメリカ国内の問題ではないということを認識すべきではないでしょうか。
抗議デモはイギリスやオーストラリア、韓国などに拡散し、日本国内においても東京渋谷で約3500人もの人がデモ行進に参加するなど、制度的人種差別打破への動きは広がりを見せています。
日本において、人種差別の問題は職場で研修を受けることはあるかと思いますが、日常的に話題に上ることはそう多くないかもしれません。企業が人種差別に関する考えをソーシャルメディア等で発信することもほとんどないと言っても過言ではないでしょう。
しかし、米国においては企業がこれらの問題に「何も発信しないこと」こそが問題視されています。「リスクになるくらいなら、この件について静観する」という姿勢は受け入れられず、消費者は企業がこの問題を解決するためにどのような考え方や具体策を持っているのか、意思表示することを期待しているのです。
■Best Buy
この件に関して真っ先にウェブサイトで意見表明したのが米国の電気量販店最大手Best Buy社でした。公開した記事は、社長を含む複数の経営陣からの共同声明で、本件に対する課題認識と今後のD&I(Diversity & Inclusion=多様性の受容)の推進に言及したものでした。
加えて、「私たちはこのような差別的行為を受けた人を身近に知っているから投稿したのではない。幸いにも身近にはいないが、この事件は私たちの友人、Best Buyで共に働く社員、または身近な人、誰にでも起こりえる可能性があるからだ。」(当社訳)と、同社はこの声明を出した背景についてHarvard Business Review誌の取材に応えています。
■Aunt Jemima
米国大手食品会社のQuakerOats社が保有するシロップブランド、Aunt Jemimaは#BLMを受けて現在自社のロゴを見直ししています。このロゴのルーツは奴隷制度がまだ存在した時代の白人家庭を支えた家政婦がモデルとなっています。アメリカでは長年親しまれたブランドですが、QuakerOats社は人種の平等を推進するためリブランディングを決定しました。
■Johnson and Johnson
米医薬品大手のジョンソン・エンド・ジョンソン社では人種差別根絶への活動として中東やアジア地域で美白製品を一部販売中止すると発表しました。今回の事件をきっかけとして寄せられた消費者の意見によっって、結果的に事業そのものの見直しを行い、販売戦略を変えるまでに至りました。
これらの事例を参照するだけでも、声明発表やリブランディング、事業の見直しと、企業が直面する課題と対応策が様々であることがわかります。
若い世代を中心とした消費者が、企業に対して社会課題を解決する具体的な行動を求めるケースが増える中、プロモーションとして#BLMのハッシュタグに便乗しているだけなのか、この問題に本気で取り組もうとしているのか、今後も企業には厳しい目が注がれることになるでしょう。
この米国で発生した事件や関連する企業の動向を対岸の火事とせず、こうした社会の要請に組織としてどう対応するか、社内で議題に上げる環境や体制を整えておくことが大切なのではないでしょうか。