お知らせ

2020年4-6月期の決算を発表した名だたる企業が赤字であるとの報道が目につきます。
バブル崩壊、リーマンショックを経験してきた者としては、肌感覚でもその影響の大きさが、かつての不況とは別物で、先が見えないものであると実感しています。

今回の経済低迷の大きな特徴の一つは、対面の生活・行動が制限されたことです。
接触や移動によって感染が拡大しないよう、可能な限りオンラインで代替するように試行錯誤が続いています。

また、GoToキャンペーンなどの政府の対応を含め、経済活動の回復と生命や医療の維持とのバランス・優先付けに、世間の意見も揺れています。

この環境下、先行きを気にしているのは、言わずもがな経営者だけではありません。
一番不安を感じているのがそこで働いている従業員だと思います。

相対的な数の違いもありますが、社会への影響力は経営者の比ではありません。
従業員が納得している様子、納得していない様子は、瞬く間に社会へ伝播します。

一昔前ならば、企業のプレスリリースや、第三者による報道等を通じて社会に浸透していくスキームでした。
しかし現代においては、従業員がソーシャルメディア(SNS)を通じて簡単に従業員自身のおかれている状況や、自分の意見や感情を社会に訴えかけることが可能です。

すなわち、経営と従業員に社内外の温度差があった場合、公開・非公開(友達限定)にかかわらず、すぐに社会に伝わってしまいます。

ですから企業は、以前にも増して会社の考えや想いなどを「言語化する」必要があり、同時に、「働く従業員も同じベクトルを向いて会社全体で前へ進んでいる状況を醸成する」必要があります。

約30年前、私が働いていた米国の半導体企業では、景気が悪くなり外部への投資が抑制されていた時期にも関わらず、社内コミュニケーションの強化(投資)を行っていました。
経営の状況に合わせて社内外のステークホルダーと関係強化を行っていたあの頃の体験は、現在私が20有余年に亘ってコミュニケーションを生業としているきっかけでもあります。

さて、社内コミュニケーションはただトップダウンで情報を開示すれば良いというものではありません。
それぞれの立場を会社が理解した上で、彼らが納得するように内容や表現を工夫する、経営が発信したことが正しく伝わりません。

ブランドのレピュテーションを重視する会社がインターナル・コミュニケーションに人と費用と時間を割く所以がここにあります。

ことさらリスクを煽る意図はありませんが、得てして日本の会社は危機管理、特に事前の準備が下手だといわれます。実際に不祥事や事故が起きてから動き出すのでは、事後の対応(クライシス・コミュニケーション)にすぎません。

今、ソーシャルメディアの影響力がこれほど高まっている現代においては、クライシス・コミュニケーションで企業信用(ブランド)を守るのではなく、逆に自社の豊富な経験を持つ従業員や、ソーシャルメディアを通じたインターナルコミュニケーションを拡充することで、平時から経営の考えを従業員に開示し、自らの企業が存在する価値や、社会との接点を明文化する必要があります。

こうした細やかなインターナル・コミュニケーションが、危機に耐えうる組織の土台となり、ブランドの信頼を強固にしていくのではないでしょうか。

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