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情報カオスで賢く活躍するために必要な能力とは?
2017/8/1 お知らせ, ブログ コミュニケーション人財, コミュニケーション教育, デジタルメディア, リスク・危機管理
この10年ほどでブログやソーシャルメディアなどのデジタルメディアを使って自分の考えや意見を世界に向けて発信することが容易にできるようになりました。しかし、昨今ではこのソーシャルメディアのボット(配信の自動化)を利用して特定の意見をデジタル上に大量拡散し、あたかも大衆の意見かのように世論を操作しようとする「コンピューター・プロパガンダ」が問題視されています。
詳細は『「コンピューター・プロパガンダ」の脅威』(2017年7月20日、NHK Web特集)をご覧ください。
世論なのかそうでないのか区別することが難しい声が無数に存在することは、デジタルコミュニケーションの発展におけるネガティヴな一面です。一方、ネット上には価値のある情報やKnow-whoがあり、また組織がステークホルダーを傾聴する場としても有益であることは間違いありません。
大切なことは、これらの情報に惑わされずに、良質な情報や人と出会い、コミュニティとの関係を創出・維持・構築するスキルを身に着けることです。
スキル向上におすすめの一冊
今日はこのスキルについて、わかりやすくまとめている一冊の著書をご紹介させていただきます。
それは、『インフォアーツ論』(2003年、野村一夫 著、洋泉社)です。(※オンラインで全文読めます。)
私が繰り返し読み返す一冊であり、組織のコミュニケーション担当者に限らず、デジタル上のコミュニケーションに関わるすべての人にお勧めしたい著書です。(内容が難しいとは思いますが、小学生向けに再編集されて出版されたらよいのに…と願うくらいです。)
この著書が出版されたのは15年近く前ですが、現在でも十分にコミュニケーターの必読書としてご推奨できます。(私はこの著書に感銘を受け、著者である社会学者&国学院大学経済学部教授、野村一夫先生に面談のお願いをしたほどです。以来、交流させていただき、現在は個人的に野村先生のゼミ『メゾメディア工房』のアドバイザリーをさせていただいています。)
インフォアーツとは、インフォテックとリベラルアーツを模して創作された言葉です。インフォテックが情報処理技術として矮小化されつつあることへの対抗原理であると同時に、新しいメディアに適応するための基礎的な教養、このふたつを統合した知的能力としてインフォアーツは紹介されています。
以下に、インフォアーツの5つのスキルを先生の著書より紹介しつつ、現在のデジタル環境に対応させながら私なりの理解と展開でご紹介させていただきたいと思います。(オリジナルは既述のリンク等をご参照ください。)
デジタルを駆使するコミュニケーション・スキル
①メディア・リテラシー
批判的な視点で情報を取捨選択する能力です。
②情報調査能力
検索結果やソーシャルメディアやニュースの個人最適化が進む中、適切な情報源にたどり着くためには、デジタル上で獲得した情報だけでなく、オフラインでも有益な情報を持つ人やコミュニティに接触するなど、多様な手段を持つことが重要です。
③コミュニケーション能力
デジタルメディア上のコミュニケーションに参加することです。デジタルが人々の主たるコミュニケーションプラットフォームとなった今、デジタル上で発言しなければ、存在していないも同然です。また、デジタル上のコミュニティには発言者の多く、その中で秀でるためには他者に発表する能力、プレゼンテーション能力を高めなければなりません。そして意見や価値観の異なる人との調整力やディスカッション能力が求められます。
④シティズンシップ
本の中では、「市民的能動主義」といった意味で紹介されています。
物理的なコミュニティを超えたデジタルコミュニティは、グローバル社会そのものだと、私は考えています。このコミュニティをより良い場所にするために、他者を尊重し、人間関係を調整し、グローバル社会市民の発展や幸福を追求し続ける能力だと思います。
⑤情報システム駆使能力
情報システムと対等につきあう技術的能力として紹介されています。
ビッグデータやIoTなど情報システムの発展はめざましく、対等関係になるのは容易ではありません。しかし、検索すれば数多くの情報を獲得でき、外国語の機械翻訳も進化し、ウェブサイトを作ろうと思えば簡単に作ることができます。
今私たちを取り巻く環境はネガティヴな面やリスクが増える一方で、情報システムの恩恵を容易に受けることができる環境でもあります。
機動的に動かない理由はありません。私はここで情報システム駆使能力を環境や機会を最大限に活用する機動的に動く能力としてご紹介したいと思います。
教育だけが世界を変えられると思っている。
これは、2011年にテレビ東京で放送されていたドラマ『鈴木先生』の主人公のセリフです。この先生は、強い信念を持って、様々な問題を抱えた生徒を、ひとりひとりの性格に応じた継続的なコミュニケーションで、解決策や改善案をを共に導きだしていました。フィクションのドラマではありますが、この信念と丁寧な対話は非常に印象的で、今も心に刻まれています。
個々人がデジタルをより賢く活用するためのこれらのコミュニケーションスキル。自ら獲得するには、時間や経験を必要としますが、デジタルが私たちの主たるコミュニケーションプラットフォームとなった今日、インフォアーツはデジタル上で専門的な情報を獲得したり、ビジネスを行う際の基礎的な教養だと思います。
特に組織においては、組織が求めるリテラシーを個々人(企業の場合は社員)に教育し、世代やライフスタイルによって異なるデジタルの使い方やスキルに対して、一定の質を求め続けることが重要となるでしょう。
組織に限らず、ひとりひとりがグローバルシチズンシップを持ってデジタルを駆使し、情報カオスの中から光るものを探し出し、さらに直接目で見たり、会ってみるなどしてデジタルとリアルを上手く活用すれば、この混沌は少しずつ秩序のある空間へと変わっていくかもしれません。
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