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セブンの契約解除撤回は対岸の火事ではない。平時にこそ対話の場を。

2019/3/19 ブログ ダイアローグ, リスク・危機管理, 企業レピュテーション, 傾聴, 働き方改革, 組織コミュニケーション Minako Breadsmith

セブン-イレブンのフランチャイズオーナーが悲痛な叫びをあげ、時短営業に踏み切ってから約1ヶ月半。その間に強固な姿勢を取ったセブン-イレブン本部が、一転してこのオーナーに歩み寄ることになりました。

セブン本部、契約解除を撤回 短縮営業店に (共同通信This kiji is)
https://this.kiji.is/478762702617412705?c=39546741839462401

今回はこの経緯を振り返りながら、企業が工夫できるステークホルダーとのコミュニケーションについて考察を行います。

24時間営業という顧客との約束を守ろうとするセブン-イレブン

私たちが24時間営業のコンビニや飲食店に恩恵を受ける一方で、「便利」なサービスを提供し続ける運営側は人手不足やバイトテロ(※1)などの様々な困難に直面しています。

今年2月、大阪府東大阪にあるセブン-イレブンのフランチャイズ加盟店(以下、同店)のオーナーは、営業時間を6時から25時までに短縮すると張り紙を出しました。このことがコンビニのフランチャイズ契約のあり方に大きな議論を呼ぶことになりました。

コンビニにとって24時間営業は、顧客がいつでも安心して買い物ができることを約束するブランドのコアともいえます。
そのため、本部と運営店のフランチャイズ契約書にはオーナーがそれを守ることが明記されています。
以下の記事にあるように、セブン-イレブンではこのブランドを守ろうとしていると捉えることができます。

セブン社長が語っていた「24時間営業を止めたいなんて声は出てない」(日経ビジネス)
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/022700125/

しかし、人手不足とオーナー自身の健康上の理由から、同店は時短営業に踏み切りました。この事実に対して、セブン-イレブン本部担当者は違約金として1,700万円を同店に請求すると話したといいます。

同店オーナーは契約内容を理解した上で契約を交わしているわけですから、違約金の支払いを言い渡されても仕方がないことではありますが、同店オーナーの悲痛な叫びに共感する意見が各所からあがりました。

24時間営業の短縮 セブン、加盟店オーナーとの団体交渉に応じず 「労使関係ない」(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20190227/k00/00m/020/250000c

しかし、セブン-イレブン本部が強固な姿勢を崩さなかったために、議論はさらに激化し、セブン-イレブンに対して批判的な意見が多く目立つようになりました。

セブン-イレブン、最悪な気分! (togetter)
https://togetter.com/li/1320970

議論はライフスタイルやワークスタイルのあり方へと発展

今回の件は、セブン-イレブンのあり方に疑問を呈するだけでなく、24時間営業というサービスのあり方を疑問視する声が高まりました。中には、食品廃棄の問題に発展させた投稿や議論も出てきました。

コンビニ24時間営業はグローバルスタンダードではなかった!。日本よ、これが世界だ。 (togetter)
https://togetter.com/li/1323178

こうした議論に耳を傾けることは重要であることは間違いありませんが、実際に顧客の購買行動がネット上で発言しているような道徳的な判断を常にできるか否かは別物だと思います。

理想と現実にはギャップがあるものですが、そのギャップを埋めようとする気持ちがあれば、個人も企業も一歩ずつはじめられることが何かしらあるはずです。

だからこそ、実際に顧客と一番近い距離でコミュニケーションをしている他の加盟店オーナーたちを巻き込みながら、実を伴った一歩にはなり得たのではないでしょうか。

コンビニのあり方の是非はともかく、人々のライフスタイルやワークスタイルが多様になる中で、サービスやブランドのあり方を見直さなければならない時期に来ていることはオーナーの声からも、ネットから聴こえる社会の声からも明らかなことです。

平時にこそ企業が主導となり対話の場を

多様性の受容(ダイバーシティー&インクルージョン)が叫ばれる中、世の中を巡る世論や感情は複雑です。
誰もがソーシャルメディアという発信媒体を使うことができる今日において、企業は顧客、加盟店オーナー、取引先、株主など、それぞれの利害を調整しながら経営することがこれまで以上に求められています。特定のステークホルダーの利害に偏った場合、ブランドの評判を大きく落と可能性があります。

今回のように、たった一人のステークホルダーが窮地に追い込まれたことが、世間の共感と注目を集め、企業は迅速な対応を余儀なくされました。しかし、有事が起きてからでは、同時並行で複数のステークホルダーの利害を適切に調整しながらの意思決定が行いにくくなります。

そのため、企業は外的要因を行動の起点とするのではなく、平時からステークホルダーとのコミュニケーションを活発に行い、時短営業店舗の試験導入などの具体的な行動をとっていくべきことが望ましいでしょう。
まずは、小委員会の設置などの小さなコミュニティーを設置し、当事者や社会の意見を聞き入れる仕組みを用意することが必要ではないでしょうか。
意見を聞くことは、ダイバーシティ&インクルージョンの第一歩だと考えられます。
企業は他人事と捉えることなく、同様の事例が自らの組織にも潜んではいないか、積極的に取り組むべきではないでしょうか。

※1:バイトテロ:主にアルバイトなどの非正規雇用で雇われている従業員が、勤務先の商品や什器を使用して悪ふざけを行う様子をスマートフォンなどで撮影し、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に投稿して炎上する現象を指す日本の造語である。
(出典:wikipediaより抜粋)

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