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日本におけるコーポレート・コミュニケーション考②

2018/11/7 ブログ denny

前回のブログ記事『日本におけるコーポレート・コミュニケーション考①』では、

企業が発信する情報は『企業の考え』として伝わるため、社内外にかかわらず、
「同じ部署」が「同じこと」を発信することが望ましく、企業が信頼を得るためのExternal communicationとInternal communicationのすべてを広報部署が担うべきである

と申し上げた。

理由は大きく2つある。

1.『企業のグローバル化と多様性への対応』

2.『社会変化への対応』

の観点である。

1.『企業のグローバル化と多様性への対応』について

まずは、海外進出している企業を例に考えてみたい。
企業が海外の1カ国のみに進出している場合、二国間の企業統治では相手国の社員や社会に日本式を踏襲させることでコミュニケーションをしている企業と、相手国の文化を尊重し、極力相手国のやり方でガバナンスをとっている企業とがあるだろう。
一方で、多国間となると多様性の中で日本を経由しない「三国間」のコミュニケーションも発生し、もはやここに日本式は通用しないし、1カ国の文化のみを尊重するわけにもいかない。それぞれのいいとこ取りができたらいいが、矛盾とのせめぎあいになるのが現実である。

多国間ビジネスをする上で、地政学的観点(宗教・文化を含む)から1つの価値観が必ずしも称賛されるとは限らないし、同意や受容されないことも多い。「Diversity(多様性)&Inclusion(受容)」と共通した課題である。

グローバル化した企業がInternal communicationを行っていくために必要なスキルは、その土地を理解する=地政学的観点を持つということに尽きる。
当然Internationalの場合も同様であるが、Globalの多文化が行き交う環境下では、より複雑になる。
日本で著名な会社が必ずしも海外で著名で社会的信用を得ているとは限らない。
社会や社員、その家族、すべてのステークホルダーに寄り添う観点から、伝えたい物事の根幹を磨き出し、誠実かつ社内外で矛盾のない発信をし、信頼を得ていくことが求められる。Internal communicationを通して、社員や家族に企業の信頼を得、そこから社会への派生を期待するプロセスである。
この役割をなすべきコミュニケーターは企業のトップであり、組織の中ではExternal communicationにおいて企業の信頼を得るために活動する広報部署がその任を担うべきであるのだ。

一方で海外進出をしていない企業においても、ダイバーシティの推進がその責務となっている。
多様な人材に会社が物事を伝達する上で、やはり必要なのは誠実さであり、得るべきものは信頼である。
結論は海外進出している企業の例で述べたとおりで、会社の考えは複数の主管部署が自ら発信するのではなく、一度広報部署を経由して、社員の信頼を得られるような語り口に変換して伝える必要がある。

2. 『社会変化への対応』

もう一つ忘れてはならないは「傾聴」だ。
コーポレート・コミュニケーションにおいて、ステークホルダーからの意見や声をどのような体制で受け止めるべきかは、信頼を得る上で重要なタスクである。

社会の人々の関心事や物事の捉え方の指針などは日々変化している。
この社会変化、潮流に敏感に反応し、その声に耳を傾けなければ企業が信頼を得ることは出来ない。

不意に組織がネガティブな不祥事を発生させてしまい社会からバッシングを受けた際に、自らの理屈や業界のしきたりを全面に出して社会に対し「理解せよ」と押し付け、一方的に発信するばかりで質問を受け付けないことで、クライシスが拡大する事例は、直近でもスポーツ界を中心に複数あり、記憶に新しい。

「何かが起こってから対応する」のではなく「日頃から備える」ことが重要なのは言うまでもないが、更に重要なのは自らの組織が行う事業は社会に理解されるものなのか、常日頃からチェックすることである。
しかし、現状をみると社内へ情報発信している複数の部署が個々にこれを行うことは困難であろう。重複業務となることも想定される。
だからこそ、この役割を広報部署が担い、経営層と的確に自社の立ち位置を共有する必要がある。

それぞれのおかれた環境や、企業の成り立ちによってその組織体系や役割も様々だ。
つい数年前までは、日本社会の流れだけを見ていればコーポレート・コミュニケーションは成立していたし、一部の発信元を押さえれば情報はコントロールできることが多かった。

インターネットが商用利用されて20有余年。
一部のユーザーがホームページを通じて発信し、多くのユーザーが好きな情報を取りに行くだけの社会から、SNSを中心としたオウンドメディアの台頭によって、誰もが手軽に発信でき、情報があふれる社会になった。
更にスマホの世界的な普及で、更に情報は身近なものになった。

国内に目を戻せば、規制緩和や市場開放など、これまで法や仕組みに守られてきたことが変わってきている。

こうしたゲーム・チェンジともいえる動きは世界規模であり、今後も続くだろう。
コストセンターであった日本の広報部署の今後の役割は大きい。

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